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インドネシアで会社を立ち上げてわかった“海外ビジネスのリアル”② | インドネシア大好き

インドネシアで会社を立ち上げてわかった“海外ビジネスのリアル”②

👉 序章〜第2章はこちらから読む


異国で会社を作る、それは「登記」と「夢」だけでは続かない現実との闘いです。
第1章・第2章では、法人設立の苦労と、現地スタッフとの信頼構築についてお話ししました。
ここからは、より“経営の核心”に踏み込みます。

会社を作っても、資金がなければ動けない。
売上があっても、現金が回らなければ止まる。
そして、銀行は「信頼」では動かない。

今回は、私がインドネシアで体験した資金繰りの現実と、信用を築く難しさについてお伝えします。
数字よりも人。書類よりも感情。
それでも、経営を止めないために、何が必要なのか。
“海外でビジネスを続ける力”の本質を掘り下げます。

第3章:資金と信用 ― 銀行は”信頼”では動かない

見えない壁「銀行信用」との闘い

会社ができても、資金がなければ動けません。ここで直面したのが、”銀行信用”という見えない壁でした。日本では、事業計画と担保があれば融資を受けられる可能性がありますが、インドネシアでは話が違います。

現地銀行で口座を開くことさえ容易ではありません。外国人社長、外資比率、事業実績――どれも「リスク」と見なされ、融資どころか口座開設の審査でさえ時間がかかります。私たちの場合、インドネシアの銀行に相談したときも、「信用評価は親会社ベース」と言われました。つまり、現地法人には、独自の信用力がないと判断されたのです。

結局、取引先からのなるべく早い入金でやり繰りする日々が続きました。融資枠はゼロ。クレジットラインもゼロ。すべてが現金ベースです。日本にいた頃は、「信用があれば融資が受けられる」と思っていましたが、ここでは「担保がなければ信用もない」という厳しい現実がありました。

現金主義が生む資金繰りの苦しさ

一方で、現地では”現金主義”が根強く、支払いは遅れ、回収は不安定。契約書には「30日以内に支払い」と書いてあっても、実際には45日、60日と遅れることが珍しくありません。理由を聞くと、「担当者が休暇中」「承認が遅れている」「システムトラブル」――言い訳はいくらでも出てきます。

それでもスタッフの給料や仕入れは待ったなし。毎月末日が給料日ですが、その前日になると、私は必ず銀行残高を確認しました。「キャッシュが尽きたら終わり」という現実を、毎月のように感じていました。仕入れと輸出計画、入金までのキャッシュフローとのにらめっこ。

特に厳しかったのは、創業3年目の夏。在庫もたまり、いざ輸出しようと取引先に輸出計画を提出すると、売れてない在庫がまだあるので、輸入を見合わせるとの通告。

売上が激減。それでも固定費は変わりません。工場家賃、人件費、電気代、水道代、税金などすべてが重くのしかかりました。夜中に目が覚めて、エクセルで資金繰り表を見つめる日々。「あと2ヶ月持つだろうか」「3ヶ月後はどうなる」――そんな不安と戦い続けました。

信用を育てる力が、融資よりも強い資産になる

資金繰りの不安がある中での決断や判断は、常に「心の強さ」を試されます。この時期に学んだのは、数字を読む力以上に、”信用を育てる力”が経営者には必要だということでした。

なんとか、他の販売先を見つけ、在庫もすべて売れました。

一度築いた信用は、融資よりも強い”資産”になる。それを支えてくれたのは、現地の社員、仕入先、そして地元の漁師たちの存在でした。彼らがいなければ、私の会社はとっくに倒れていたでしょう。

お金は数字ですが、信用は感情です。そしてインドネシアでは、感情がお金を動かします。

第4章:漁業の現場で学んだ「想定外を想定する力」

相手は自然――計画通りにいかない日常

私たちのビジネスの主軸は、タコの調達と輸出です。つまり、相手は”自然”。この業界では、計画通りにいくことのほうが珍しい。

乾季になると漁が止まり、波が荒れると船が出ない。風が吹けばはタコが捕れにくく漁師が休む。気温が上がれば鮮度が落ちやすく、冷蔵設備がなければ品質が保てない。1日原料が止まれば、工場は静まり返る。「明日届く」と言われて3日遅れるのは日常。自然と人間の間に立ち、スケジュールを組み直す。その繰り返しです。

最初の頃、私は「なぜ予定通りに進まないのか」とイライラしていました。しかし、ある漁師に言われた言葉が忘れられません。「海はあなたのスケジュールなんて知らない。私たちは海に合わせて生きているんだ」――その通りでした。

トラブルが起きる前提で動く

インドネシアで学んだのは、”想定外を想定する力”こそが経営の本質だということ。リスクを完全に避けることはできません。むしろ、トラブルが起きる前提で動く――これが現地経営の基本です。

たとえば、出荷予定のコンテナが1本ある場合、私は必ず「もし原料が届かなかったら?」「もし船が遅れたら?」「もし品質に問題があったら?」という3つのシナリオを用意します。代替の仕入先、予備の冷凍庫、顧客への連絡タイミング――すべてを事前に想定しておくのです。

ある時、大雨で1週間まるまる原料が届かなかったことがありました。その間、スタッフの士気を保ち、顧客との連絡を続け、工場を維持する。幸い、小さい原料を確保していたため、カットタコを製造することで、毎日の製造を維持することで、工場を回すことが可能になりました。

経営者は、危機の時こそ”静かな顔”をする

この時、私が最も気をつけたのは、自分の表情です。経営者が焦れば、チーム全体が不安になる。だから、どれだけ内心で焦っていても、表面は冷静でいなければならない。「大丈夫、なんとかなる」という空気を作ることが、リーダーの役割です。

“安定”という言葉は、海外の現場には存在しません。でも、その不安定さの中でこそ、人の真価が問われます。トラブルを乗り越えた後、スタッフが「あの時は大変でしたね」と笑って話せる関係――それが、何よりも強いチームを作るのです。

次回に続きます。

kenji kuzunuki

葛貫ケンジ@インドネシアの海で闘う社長🇮🇩 Kenndo Fisheries 代表🏢 インドネシア全国の魅力を発信🎥 タコなどの水産会社を経営中25年間サラリーマン人生から、インドネシアで起業してインドネシアライフを満喫しています。 インドネシア情報だけでなく、営業部門に長年いましたので、営業についてや、今プログラミングを勉強中ですので、皆さんのお役にたつ情報をお伝えします。