インドネシアへ戻るフライトの前、JALのJGCワンワールドステータスを活かして、成田空港第2ターミナルの「キャセイパシフィックラウンジ」へ。JALのサクララウンジより一段奥まった場所にあるこのラウンジは、利用者が限られる分だけ静かで落ち着きがあり、まさに“空港にいることを忘れる”ための場所でした。ガラス越しに飛行機を眺めながら、これから始まる長い旅路に向けて心と体を整えるには、十分すぎるほどの時間でした。
第2ターミナル本館の端にある「CATHAY PACIFIC」ラウンジ。JAL便利用でも、ワンワールドのサファイア以上であればここに入れるのが嬉しいところです。自動ドアの先には、温かい照明に照らされたレセプション。チェックインを済ませて扉をくぐると、まず感じるのは“音の少なさ”です。
ラウンジ中央には大きなアイランド型のビュッフェカウンターがあり、席は革張りの1人掛けが多め。パーティションや飾り棚で緩やかに区切られているため、自然なプライベート感が保たれています。和の組子を思わせる木の意匠や、苔と白砂を配したミニチュア枯山水も設置され、“香港の航空会社のラウンジでありながら、日本の空港らしい落ち着き”を感じられるのも魅力でした。
ドリンクカウンターでまず目を引いたのが、Piper-Heidsieck Essentiel Extra Brut。冷えたフルートグラスに注ぐと、繊細な泡が立ち上がり、柑橘と白い花の香りがふわっと広がります。酸味がしっかりしていて、空港でありがちな“甘ったるさ”がなく、口の中をリセットしてくれる味わい。これから始まる長時間フライトに備え、胃をアルコールで満たしすぎない絶妙なバランス感がちょうど良いのです。
ローストビーフやハム、カマンベールとチェダーのチーズを少量ずつ取り、サラダを添えたワンプレート。香港らしい“小皿文化”を感じるつまみやすさが、出発前の時間を軽やかにしてくれます。
キャセイの香港本拠ラウンジのような麺スタンドや点心ワゴンはありませんが、成田ラウンジでは以下のようなラインナップが整っています。
サラダとヨーグルト、ミルクなどの軽食
ハム、サラミ、スモークビーフ、カマンベール&チェダーなどのコールドカッツ
温かい料理は日替わりで数種(この日はパスタやアジアンテイストの一品が用意されていました)
コーヒーマシン、ソフトドリンク、ビール、ワイン、スピリッツもひと通り完備
しっかり食べたいときはJALサクララウンジのダイニングのほうが向いていますが、「軽く摘んで美味しいシャンパンを一杯」というモードなら、こちらの方が断然好み。旅の前に“食べ過ぎない”という選択肢は意外と重要です。
香港行きや欧米行きのピーク時間帯を除けば、驚くほど空いています。私が訪れた時間帯は、席のほとんどが空席で、写真撮影にも気を遣わないほどでした。JALの上級会員がまず向かうのはサクララウンジなので、あえてこちらを選ぶ人は少ないのかもしれません。静かに過ごしたい人にとっては、これが最大のメリットです。
窓際の席で顔を上げれば、出発を待つ機体が目に飛び込んできます。集中とリラックスを自然に切り替えられるこの環境は、空港では意外と貴重です。隣席との間に低めの仕切りがあるため、画面が覗かれる心配も少なく、静かさを重視する人には相性の良いラウンジだと思います。
フライト前の時間をどう過ごすかは、旅全体の満足度を大きく左右します。ガヤガヤしたフードコートで時間を潰すのも悪くありませんが、飛行機を眺めながらシャンパーニュを一杯、そして深呼吸――そんな“余白”を与えてくれるのが、このキャセイパシフィックラウンジでした。インドネシアでの忙しい日常に戻る前、心を落ち着かせるための“最後の日本時間”を過ごせる場所です。
JALワンワールドのステータスを持っているなら、成田T2では一度立ち寄ってみる価値があります。きっと、旅のテンポが一段とゆっくり、心地よいものになるはずです。