ビッグマック指数によると、インドネシアのビッグマックは世界的に見ても非常に割安です。英国エコノミスト誌が毎年2回発表するビッグマック指数をもとに、2025年7月時点の為替レート(1ドル=約16,260ルピア)で計算すると、インドネシア・ルピアは約57%過小評価されていることが分かります。本記事では、その理由と背景、そして現地で生活する立場からの実体験を交えて、「なぜインドネシアのビッグマックは安いのか」をわかりやすく解説します。
海外へ行くと、その国の物価を最も手軽に体感できる場所の一つがマクドナルドです。世界共通のメニューでありながら、国によって価格が大きく異なるため、「この国の物価は高いのか安いのか」を瞬時に知ることができます。
インドネシアのマクドナルドでビッグマックの価格を見ると、
42,000ルピア(約2.6ドル/約400円前後)※2025年7月時点、1ドル=約16,260ルピア
一方、アメリカではビッグマックが 6.01ドル(約900円) と、およそ2.4倍もの価格差があります。
この価格差を世界的に比較できるようにした指標が、イギリスの雑誌『The Economist』が1986年に生み出した「ビッグマック指数」です。最新の指数で計算すると、インドネシアのルピアは約57%も“過小評価(アンダーバリュー)”されているという結果が出ています。
まずはビッグマック指数の仕組みと、2025年7月の為替レートを踏まえた現在の状況を整理してみましょう。
● ビッグマック価格と為替レートの関係
インドネシアのビッグマック:42,000ルピア
アメリカのビッグマック:6.01ドル
この価格差から算出される、ビッグマックが同じ価格になるための理論上の為替レート(購買力平価・PPP)は、
1ドル=6,988ルピア
となります。
一方、2025年7月時点の実勢レートは、
1ドル=約16,260ルピア
です。
理論値と実勢レートを比べると、
インドネシアのルピアは約57%アンダーバリュー。
つまり、通貨価値が理論値より大幅に低いため、ビッグマックが“割安”に感じられるわけです。
「なぜビッグマックで通貨を比較するのか?」という疑問は当然です。その理由はとてもシンプルで、以下の特徴を満たしているからです。
こうした特徴により、国ごとの物価構造が最も反映されやすい商品として選ばれているのです。
この分かりやすさから、ビッグマック指数は「バーガーノミクス(Burgernomics)」とも呼ばれ、いまでは経済学の教科書にも載るほど有名な指標になっています。
3つの要因で解説
ここからは、ビッグマック指数の結果を踏まえつつ、インドネシアでビッグマックが割安に見える背景を具体的に解説します。
インドネシアでは外食産業全体の人件費が先進国と比べて低い水準です。マクドナルドのような大手チェーンであっても、スタッフの賃金は比較的抑えられています。
その結果、
値上げ圧力が小さい
人件費インフレが起きにくい
といった特徴があり、ビッグマックの価格も長期間にわたり低い水準に保たれています。
インドネシアでは、野菜・油・砂糖・調味料など多くの食材を国内で調達できます。これにより、食材コストが安定して低く抑えられるという強みがあります。
また、インドネシアの外食市場は競争が非常に激しいため、価格を上げると顧客が離れてしまうリスクが高く、企業側としても慎重にならざるを得ません。結果として、効率化やスケールメリットを活用しながら、低価格が維持されています。
ビッグマック指数には「GDP調整版」もあります。
これは、所得水準が低い国ほど物価が安くなるという一般的な傾向を踏まえ、公平に比較するための補正を加えたものです。
しかし、このGDP調整版で見ても、
インドネシアのビッグマックは依然として割安
という結果が出ています。
つまり、単に「発展途上国だから安い」のではなく、構造的に低価格を維持しやすい経済特性があるといえます。
私が暮らすマカッサルでも、マクドナルドを利用するたびに「やはり安い」と感じます。
セットメニューでも、日本の半額近い価格で食べられる場合が多く、日本人旅行者が「インドネシアのマックって安い!」と驚く場面もよく見かけます。
これはデータだけではなく、生活実感としても“割安感”がはっきり分かる例だと言えるでしょう。
ビッグマック指数は遊び心のある指標ですが、インドネシア経済の将来を読み解くヒントにもなっています。
特に2025年以降のインドネシアでは所得上昇が続いており、ビッグマックの価格も今後数年で上昇する可能性があります。
データ・経済構造・現地生活の感覚、それらすべての観点から見ても、インドネシアのビッグマックは世界的に割安だと言えます。
ルピアは約57%のアンダーバリューという結果は揺るがず、旅行者にとっては“物価の安さを体感できる指標”、ビジネスパーソンにとっては“インドネシア経済の潜在価値を読み解くヒント”になるはずです。
※ビッグマック指数は購買力平価の参考指標であり、厳密な為替評価を示すものではありません