ブルネイ国際空港を出発し、エアアジアQZ529便でジャカルタへ向かう夜のフライト。霧に包まれたA320の機内、激しい乱気流、揺れが収まって始まる機内食サービス、夜景に輝くジャカルタなど、2時間のフライトをお伝えします。
ブルネイ発ジャカルタ行き、エアアジアQZ529便。
機体番号PK-AZDのAirbus A320-216で、定刻は21時30分です。
搭乗橋を渡って機内に入った瞬間、思わず目を疑いました。
キャビン全体が霧のように白くかすみ、前方席がぼんやりとしか見えません。
まるで濃霧の中を歩いているような感覚です。
これは一体、何が起きているのでしょうか。
座席に着き、周囲を見渡すと、他の乗客も不思議そうに天井を見上げています。
しかし、慌てた様子は誰にもありません。キャビンアテンダントも普段通り業務をこなしています。
この霧は、A320などのエアバス機でよく起こる現象です。
外気が高温多湿の環境で、機内の空調が一気に冷やされると、空気中の水分が凝縮されて霧状に見えます。
特に東南アジアのような熱帯地域では珍しくなく、安全上の問題もありません。
しばらくすると自然に消えていきます。
実際、離陸準備が進むにつれて、霧は徐々に薄れていきました。
定刻21時30分、機体がゆっくりとタキシングを開始。
しかし窓の外には雨が降り、遠くで雷が光っています。
厚い雲に覆われたブルネイの夜空に、時折稲妻が走る。
典型的な熱帯スコールです。
「こんな天候で飛べるのだろうか」と少し不安になります。
それでも機体は予定通り滑走路へ。
キャビンアテンダントはシートベルトの着用を確認し、いつも通り安全確認を行います。
滑走路に到着し、エンジンの音が高まりました。
雨の中を力強く加速し、そのまま浮き上がります。
離陸の瞬間は風の影響で大きく揺れましたが、機体は高度を上げ続けました。
窓の外は真っ暗で、稲妻だけが光を放っています。
高度が上がっても揺れは収まりません。
シートベルトサインは点灯したままで、乗務員も座ったままです。
カリマンタン上空は、大気が非常に不安定です。
熱帯雨林から上昇した湿った空気が激しい対流を起こし、乱気流を発生させます。
特に雨季や夜間は揺れが強まりがちです。
機体は上下に揺れ、時には左右にも傾きます。
シートベルトが体を締め付け、不安定な状態が続きます。
周囲の乗客も静かに耐えている様子。
この揺れは30分以上続きました。
シートベルトサインは消えず、機内サービスも始まりません。
ただひたすら、揺れが収まるのを待つ時間が続きました。
離陸から約40分後、ようやく揺れが収まり始めました。
シートベルトサインが消灯し、乗務員が立ち上がります。
長い揺れの緊張感が解け、機内に落ち着いた空気が戻ります。
カートを押しながら通路を進み、機内食の提供が始まりました。
事前注文の機内食 — Uncle Chin’s Chicken Rice
私は事前に「Uncle Chin’s Chicken Rice(ナシアヤム・アンクル・チン)」を注文していました。
価格は50,000ルピア(約500円)。
エアアジアは基本的に機内食が有料ですが、事前注文の方が割安です。
夜便では特に重宝します。
乗務員が温かいミールを手渡してくれました。
パッケージを開けると湯気が立ち上がり、食欲をそそります。
温かいご飯の上に、スライスされた鶏肉。
照りのある甘めのソースが絡み、赤唐辛子がアクセントに添えられています。
味はまあまあ
一口食べてみると、ご飯はややパサつき気味ですが、味付けは悪くありません。
鶏肉は柔らかく、東南アジアらしい甘めのソースがしっかり絡んでいます。
コーヒーも頼み、一緒に楽しみます。
エアアジアのコーヒーは薄めですが、温かくて落ち着きます。
食事を終え、窓の外を眺めると、雲の切れ間から地上の光が見えてきました。
オレンジや青の灯りが無数に散らばり、輝いています。
それはジャカルタの夜景です。
巨大都市の灯りが暗闇の中に広がり、圧倒的な光量と密度を放っています。
機体は高度を下げ、スカルノ・ハッタ国際空港の滑走路が光の帯となって現れました。
そのまま順調に着陸し、エアアジアQZ529便は無事にスカルノ・ハッタ国際空港ターミナル2へ到着しました。