国内線の乗り継ぎでスカルノ・ハッタ国際空港(ターミナル3)の国内線制限エリア入口横を抜けると、ふわっと鼻に届くにんにくと牛骨スープの香り。看板に「A FUNG BASO SAPI ASLI」とあれば、もう足は止まりません。注文して数分、湯気の立つバクソと、搾りたてで甘さ控えめのエス・ジェルック(オレンジジュース)がトレーにのってやって来る。その瞬間、長旅の疲れがふっと抜けていく。今回は、国内線乗り継ぎの合間に食べたA FUNGのバクソ(肉団子スープ)の忘れがたい一杯をお伝えします。
インドネシアの空港フードコートは、フライドチキンやコーヒーチェーン、パン屋など選択肢は多いものの、「温かいスープものをさっと食べたい」ときに意外と迷います。そんな時の切り札がA FUNGです。牛肉の旨味が濃く、にんにくのパンチが効いたスープ、つるんとした食感のバクソ、そして香味油と揚げにんにくのコク。空港価格ではあるものの、満足感はしっかり。乗り継ぎ時間が1時間でも、さっと食べて満たされるのがありがたいポイントです。
メニューは「Baso Kuah(スープ)」をベースに、ビーフンやクエティアオ(米麺)、豆腐、ババット(ハチノス)、ウラット(筋)入りなどバリエーションが豊富。今回はシンプルに、バクソが主役の一杯を選びました。
レンゲですくって一口すすれば、まず香ばしい揚げにんにくの香りがふわり。牛骨ベースの澄んだスープに、葱とセロリの爽やかさ、そして肉団子からじんわりと溶け出す旨味が重なります。写真でも分かる通り、スープ表面にきらりと光る香味油が食欲をさらに掻き立てます。バクソは弾力があり、噛むたびにじゅわっと肉汁が広がる。数個入っているワンタン風の具(あるいは牛すじ系の具材)も、食感の変化を与えてくれ、飽きることがありません。
バクソには小さなライム(limau kasturi)が添えられています。半分に絞ってスープに落とすと、ふっと柑橘の香りが立ち、味の輪郭がくっきり。辛いのが好きな方はサンバルを少しずつ溶いて、刺激を足すのもおすすめ。空港でここまで“自分好み”に調整できる一杯に出合えるのは、正直うれしいものです。
飲み物はもちろんエス・ジェルック。氷の入ったグラスと、濃いめのオレンジジュースが別々に出てくるので、好みに合わせて割りながら飲めます。インドネシアのドリンクは甘いものが多いですが、ここのエス・ジェルックは搾りたての果汁感が主役。グラスの氷で薄めながら飲むと口の中がさっぱりリセットされ、再びスープへ、という無限ループに。飛行機に乗る前後は喉が乾きがちなので、酸味の効いたビタミン補給は体が喜ぶ感覚。甘さが控えめで酸味がくっきりとしており、スープの余韻を邪魔しない爽やかさが魅力です。
乗り継ぎの空港で地元らしい味を一杯、記憶に刻みたい。A FUNGのバクソは、まさにその願いを叶えてくれる存在です。にんにくの香りがたっぷり効いた熱々のスープは体にやさしく染み、甘さ控えめのエス・ジェルックは乾いた喉と気持ちを潤してくれる。食べ終えた頃には、次のフライトに向けて頭も胃袋もリセット完了。
ジャカルタのスカルノ・ハッタ空港で国内線に乗り継ぐ機会があれば、ぜひA FUNGを試してみてください。慌ただしい空港の片隅で、ほっと一息つける“確かな一杯”となるでしょう。