テルナテ最終日、ついに1000ルピア紙幣に描かれた「マイタラ島とティドレ島」の景色に出会いました。ンガデ湖展望台から湖越しに望む風景、そしてフィトゥ・ビーチから見た象徴的な眺め。紙幣と実際の景色を重ね合わせた感動と、そこに生きる人々の暮らしが織りなす絶景をご紹介します。
最終日の朝、ベランダから広がっていたのは、東の空がオレンジ色に染まる光景。海の向こうからゆっくりと昇る太陽に照らされ、テルナテ港のクレーンや街並みのシルエットが浮かび上がります。日常の風景が一瞬にして特別な時間に変わり、旅の終わりを彩ってくれました。
テルナテの旅もいよいよ最終日。これまで天候に恵まれず、山の頂は常に雲に隠れていましたが、ついにそのチャンスが訪れました。ホテルのベランダから見た朝日は、旅の締めくくりにふさわしい光景。雲と海が朝日を浴びて輝く様子に、心が洗われるような気持ちになりました。
そしてこの日、どうしても叶えたかったのが「1000ルピア紙幣の景色」を自分の目で見ること。チェックアウトまでの限られた時間を使い、車を呼んで出発しました。
「これから1000ルピアの景色を見に行ける」――そう思うだけで胸が高鳴り、ホテルを後にしました。
まず向かったのは、ホテルから車で約10分の展望台「Ngade Puncak Bak Air」。ここは「Danau Ngade(ンガデ湖)」越しにティドレ島とマイタラ島を望むことができる絶景スポットです。
湖面に空と山が映り込み、奥には連なる島々。湖と海、そして山が重なり合う風景は、一枚の絵画のようで、テルナテの自然の豊かさを象徴しているかのようでした。
展望台にはカフェもありますが、訪れたのは早朝でまだオープン前。静けさの中で眺める景色は格別で、訪れて本当によかったと思えるひとときでした。
しばらく景色を楽しんでいると、GRABの運転手が「ここは1000ルピアの景色ではない」と教えてくれました。驚いて尋ねると、実際の風景は別の場所から望めるとのこと。そして親切にも、そのスポットまで案内してくれることになりました。
車で坂を下ること約10分。たどり着いたのは「Pantai Fitu(フィトゥ・ビーチ)」。こここそが、1000ルピア紙幣に描かれた景色を正面から望める場所だったのです。
ビーチに降り立ち、振り返った瞬間、目に飛び込んできたのは見慣れた構図――紙幣の裏面に描かれたマイタラ島とティドレ島の姿でした。
海の向こうにそびえる二つの島。雄大なティドレ島の背後に寄り添うように見えるマイタラ島。1000ルピア札を手に取り、景色と重ね合わせると、その一致に胸が熱くなります。
「ようやく出会えた」――その一言に尽きます。前日に訪れたマイタラ島が、今度は遠景として姿を見せる。その繋がりが旅をより豊かにし、強い余韻を残してくれました。
Pantai Fituは観光地として整備されているわけではなく、地元の人々が集う素朴なビーチでした。子どもたちが楽しそうに泳ぎ、漁師の船が波間に揺れる光景。その日常こそが、紙幣に描かれた風景に命を与えているように感じられます。
1000ルピアという小額紙幣に選ばれた景色は、観光名所というよりも「人々の生活の風景」。インドネシアの文化や自然の豊かさを象徴する存在であることに、強く心を打たれました。
紙幣を通じ、この風景はインドネシア全土の人々の手に渡り、日常の暮らしの中に息づいています。その意味を思うと、この光景は単なる観光スポット以上の価値を持っていると感じました。
テルナテ最終日の短い時間でようやく出会えた「1000ルピアの景色」。それは観光のハイライトというだけでなく、これまでの旅で体験した出来事すべてを凝縮したような瞬間でした。
紙幣に描かれた景色を訪ねる旅は、単に写真と現実を重ねる感動にとどまらず、その土地の暮らしや文化を理解するきっかけを与えてくれます。
インドネシア・マルク諸島を訪れるなら、ぜひ足を運んでほしい場所――それが「Pantai Fitu」から望む1000ルピアの風景です。観光ガイドにはまだ大きく取り上げられていませんが、だからこそ静かに感動を味わえる特別なスポットだと言えるでしょう。