ジャカルタとバンドンを約40分で結ぶ、インドネシア初の高速鉄道「WHOOSH」。開業から約2年が経ち、すでに“実用の足”として多くの人々に利用されています。今回はそのWHOOSHのファーストクラスに乗車し、ハリム駅からパダララン駅までの週末弾丸旅を体験してきました。走行中の乗り心地や軽食サービス、途中のカラワン駅の様子、そしてパダララン駅での乗換事情まで、詳しくお伝えします。
今回予約したのは、ファーストクラスの8号車にある1人掛け座席。
ハリム駅を出発する列車では、8号車が先頭車両となります。
1人席は窓側に配置され、周囲との間隔にも余裕があり、パーソナルスペースは十分。足元も広々としており、リクライニング機能も快適。短距離の移動とは思えないほど、上質な時間を過ごせる座席です。
定刻通り、WHOOSHはハリム駅を静かに滑り出します。加速時の振動や騒音はほとんどなく、まるで地面から浮いているかのような静けさ。車内ではアテンダントによる丁寧な挨拶が行われ、ファーストクラスならではの落ち着いた空気が流れます。
着席後すぐに軽食が提供されます。
内容は、パン、ミックスナッツ(Dua Kelinci)、チョコバー「Beng-Beng」、そしてLe Mineraleのミネラルウォーター。乗車時間が約30分という短さを考えると、ちょうど良い分量です。静かな車内でパンを頬張りながら車窓を眺める時間は、まさに至福のひとときです。
この日の列車は途中、カラワン(Karawang)駅に停車。
現在も駅周辺には工事中のエリアが残っていますが、2024年には「イオンモール・デルタマス」が開業し、都市開発が着実に進行中です。日系企業の進出も加速しており、この駅が将来的に経済の新たな拠点となる可能性を感じさせます。
現時点では、乗降客はまだ少なく、駅周辺も整備の余地があるものの、イオンモールの存在が利便性と集客力を高めているのは明らか。将来的には、ここで途中下車して買い物を楽しむという選択肢も現実味を帯びてきています。
WHOOSHの設計上の最高速度は350km/hですが、カラワン駅に停車する便では最高速度がやや抑えられる傾向にあります。今回の便では、表示された最高速度は「330km/h」。それでも、驚くほど滑らかでスムーズな走行感は変わりません。
加速も減速も非常にスムーズで、揺れもほとんどなく、会話も静かにできるほどの静粛性。座席でのんびり過ごしているうちに、あっという間にパダララン駅が近づいてきます。
列車はパダララン(Padalarang)駅に到着。乗客の9割ほどがここで下車し、バンドン市内へ向かう「フィーダー列車」へと乗り換えていきます。現在、WHOOSHはバンドン中心部までの直通運行を行っていないため、このフィーダー列車が重要なアクセス手段になっています。
しかし、到着後の改札は混雑が激しく、通過するまでに10分以上かかることもあります。原因は、QRコードチケットの読み取りに時間がかかること。開業から2年が経っても、こうした導線の改善はまだ十分ではなく、今後の改善が期待されます。
パダララン駅からバンドン中心部のバンドン駅までは、KAI(インドネシア国鉄)のフィーダー列車で約15分。この列車はWOOSHのチケットで乗車可能です。さらに、WOOSHが8両編成であるのに対し、フィーダー列車は現在も4両編成のまま。そのため、普通席では座れない乗客が多数出ることもあります。ファーストクラスやビジネスクラスの利用者専用車両はあるものの、一般車両の混雑緩和のためには、編成増強や本数の見直しが必要に感じられました。
設備の整備状況、正確な運行、行き届いたサービス、そして330km/hという高速でも揺れない走行安定性。どれをとっても、他の交通機関では得がたい魅力があります。
短距離ながらも、上質な移動体験を提供してくれるWHOOSH。開業から2年が経っても、その“新しさ”は色あせておらず、今後も日常的な都市間移動に欠かせない存在になっていくことでしょう。
今後、スラバヤ方面への延伸計画も控えており、実現すればインドネシア国内の移動スタイルがさらに変わっていくかもしれません。